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ヒカ碁二次創作のお話置き場です(ヒカル少女化注意)

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リボンの棋士  52

 


四人のいる部屋の扉を蹴破って乱入してきたのは、

御器曽卿であった。

しかし、その風貌は既に正気の人間のものではなく、 反射的に行動する下等な獣のような異様さが漂う。
扉の砕けた木片を顔にも体にも浴びていながら、払おうともしないで部屋の中をぎょろぎょろと見回す御器曽。

 

「に、に、逃げた と ぅ、思って たら こ、ここに いたのかァ… ぉお、おうか、ん、よこせ コラ…!」

 

「御器曽っ!オマエ!」

 

ヒカルがすばやくベッドを背にして飛び込んできた御器曽の真正面に躍り出た。

ヒカルの攻撃を防ごうと、御器曽はすばやく身構える。

しかし、ヒカルは剣を抜かずに、両手を広げて御器曽に向かって尋ねた。

「お父さんに近づくな!…オイ! なんで、こんなことするんだ!? オマエはこんな事して本当にこの国が手に入ると思ってるのか?!」

「…。」

ヒカルの言葉に返事もしないで、対峙する相手を首をかしげて見詰める御器曽卿。肩で

息をしながら、口の端からシュウシュウと音を漏らしている。

 

「グブ、グ、おう かん よこ せ ェ ェ …」

「な、なんだよ…。気味悪ィな、御器曽!変な魔法なんか使って、頭オカシくなっちまったんじゃねーのか!?」

しかしその声のほうに顔を向けながらも、白濁した眼がギョロギョロとあらぬ方を向く御器曽は、すでに人間の会話など理解出来ていなかった。

「いい加減あきらめろよ!オマエに王冠はわたさねぇ!それに、ホンモノの戴冠式の王冠はもうココにはねェよ!」

「ヒカル!何をしている!」

御器曽のいかれた目が、ヒカルを見ていないとはいえ、その気配から、彼女の隙を突いてただ襲うことしか頭にないのはアキラの目には明らかだった。

ヒカルが腰の剣に手をかける様子がないのを見て取ると、御器曽は口の端から涎を垂らしながら卑屈な笑みを浮かべた。

 

「な、なんだよ がっかりしねーのかよ 
…お前の欲しがってる王冠は、ココにはないって言ったんだぞ!? 
何か言えよ。 言わなきゃわかんないだろ?!」

…すでに御器曽卿は、魂の主に理性を喰い尽くされて、ヒカルを王位継承権のない者だとか 王冠を手に入れてその後どうする だとか そういう企みも失せていた。

眼の前に立ちはだかり、自分を妨害しようとする男装の少女を獲物としてしか見ていない。

かけらもそれに気付かないヒカル。


「オイ、御器…」

「どけ!」


突然躍り出たアキラはヒカルを横に突き飛ばす。

不意に横っ飛びの目に遭ったヒカルは抗議の目をアキラに向けた。

 

 ズダン!

…ヒカルが床にすっころがった音ではない。

 部屋に重く響いたのは、間髪いれずに刀を振り下ろしたと同時にアキラの踏み込んだ音だった。

 

ヒカルは部屋中を震わせる響きに驚き、同時に、躊躇なく振り下ろされた刀の閃きにも目を奪われた。

 

アキラは腰の刀を抜いて、ズバッと袈裟懸けに御器曽を斬る。


力強く振り下ろされた刀の勢いがどれほどのものか、踏み込む足の響きに戦慄すら覚えるヒカル。

 

「…アキラ…!」

 

刹那。

 

 ズデン! ごろごろごろ…

 

「どぅわ!」

じゅうたんの上に転げるヒカルであった。

アキラは視線ででも相手を刻んでやろうかという勢いで、眼光鋭く睨みつけ

 「近付く者は容赦なく斬る!」

そんな手遅れな警告の台詞まで吐き捨てる。

次いで、眼にも留まらぬ速さで水平に弧を描いた刃で御器曽を両断にしたアキラは
真っ赤な返り血を浴びる…はずだった。

 

アキラも それを覚悟で身構えていたのだが、

刀を伝う手応えは、人の肉を裂き骨を断ち割るものとはかけ離れたものだった。

ひと呼吸の後、柄から伝わる感触の異様さに、アキラの眼は怪訝に揺れた。

「!?」

アキラの一太刀で、もはや動きを止めた御器曽。それを凝視したまま、刀の柄を改めて握り構えるアキラ。

 

ヒカルが抗議の声とともに立ち上がった。

「アキラ!いきなりつきとば…、イヤそれよか、いきなり斬るなんてどーゆーことだよ!?確かにソイツは…」

ヒカルがアキラに詰め寄ろうとしたその時。

「来るなヒカル!構えろ!」
「へっ?」

棒立ちになったままの御器曽のシルエットは 突如、ずしゃっと形を崩した。

 

その体の裂け目から勢いよく湧き出たのは、黒く、大小さまざまな無数の虫達。

 

同時に御器曽が濁った眼で見回していた部屋のあちこちからも 同じく虫の群れが、高く小さな物音を立てながら湧いて出てきた。

 

「おのれ、虫の化物と化していたのかッ!?」

アキラは刀をさげると 着物の袖の端を掴み、寄り付く虫をはたき飛ばした。

 

「こんな虫とは、…低級な化物め、誰が恐れるものか!」

声をあげながらヒカルに眼をやり、アキラは驚いた。

同じく虫の群れに立ち向かっているとばかり思っていたヒカルが

 

立ち向かうどころか、自分の足元に押し寄せる虫達に硬直してしまっていた。

「ヒカル?!どうした そんなもの蹴散らせ!」

 

アキラが叫ぶ。

 

しかしヒカルにはアキラの声は届いていない。見開いた眼はもはやショックで何をも映しておらず、顔からは血の気が引いていた。

「どうしたヒカル!怪物にも立ち向かっていたキミが!…まさか…こんなところで女の子らしさが出ただなどと言うんじゃないだろうな…!?」

足元を這い上がる黒光りする虫の群れ。

ヒカルは棒立ちになったまま、ぐらりとその場に倒れかける。

「ヒカル!しっかりなさい!」

母がすかさずスリッパを振り上げた。

 

スパーン!

 

ヒカルの傍に駆け寄った母・美津子は、ヒカルに群がる虫達を見事なスリッパ捌きではたき散らした。

 

―  この物語にはたびたび登場しているが、この国ではこの黒い虫どもを駆除するための、スリッパ という履物に似た武器が存在した。
この国の女性ならどんなか弱い乙女でも、この武器を手にしただけでゴキブリ駆除の勇者となるのだった。―

 

母の華麗なスリッパ無双で、ヒカルの体を黒く覆い始めていた虫どもが、即座に散らばり逃げ惑う波と化す。

強気な表情で母はフン、と鼻息を一つ そしてこう言った。

「ヒカルもまだまだこの国の女としては未熟ね、こんな技もできないなんて。
…と言っても、男の子として育てたんですもの…。 無理も無いかしらね…。」

アキラは気を失ったヒカルを抱きかかえながら、王妃の腕前に感心して言った。

「驚きました。…この国の女性は ずいぶんお強いんですね、ゴキブリに」

「きゃ!」

「?」

「その名前は言っちゃダメ!…、怖いじゃないの!」

 

「…。」

 

実物退治にはめっぽう強くても、“ゴキブリ”という名前には弱い この国のご婦人方であった。

 

「ヒカル、しっかりしろ!」

気付けにヒカルの頬をピタピタとたたくアキラ。

「う…ぅう…ん…。」
ようやく気付いて顔を上げる。

その視界に飛び込むのは、無数の黒い虫が、黒い塊と化しながら無秩序に蠢き回る姿だった。

 

「~~~~…!」

また気を失いそうになるヒカル

「しっかりしろ!キミが気を失うんじゃない!こんなところでおしとやかになっている場合か!」

 

アキラは必死で揺さぶった。

「キミもこの国の娘なら、母上殿を見習って立ち向かうんだ!」

「な、な、なんなんだよ…?」

揺さぶられるヒカルの手から、小瓶が転がる。

母がそれを拾い上げて、中を覗いた。

「コレ、解毒剤なんでしょ?

…今こういう状態には効かないのかしら?」
「そうか…!」
それを聞くと、アキラは半ばひったくるように小瓶を手にし、口で強引に蓋を開けると、中から白い飴を取り出した。
「ヒカル、口を開けて。」
「な…に…?」
うつろな表情でようやく小さく口を動かして返事をするヒカル。
「薬を飲むんだ もしかしたら何か効き目があるかもしれない。」
「…まさか … 口移しで  なんて言い出すんじゃねーだろうな…?」
「なっ」
一瞬目をパチクリさせたアキラだが

「ふざけるなー!」

必要以上に叫んでしまっていることにも赤面しまくっている事にもアキラ本人は気付いていないのだった。

「大体、粒状の薬を口移しで飲ませる必要性がどこにある!こうするんだ!」
アキラの指先に白石よろしく挟まれた飴はヒカルの舌の奥に素早く押し込まれ

「うぐ」
嚥下するまで顎をがっしり押さえつけられてしまった。

アキラに無理やりの勢いで、白い飴を飲まされるヒカル。
「~~~~~!」」
「飲み込め…ッ!」
手足をばたばたともがき暴れるヒカルをしっかり押さえつけていたが、喉の奥に薬が落ちるのを確認すると、アキラの手が緩んだ。

「げほげほげほ、ひどいよアキラ…。犬の投薬と間違えてないか…はあ、はあ、はあ、ああ、苦しかった…
鼻は摘まむわ薬は突っ込むわ…ランボーなんだよやることがイチイチ… ううう。」
なみだ目で不満そうにアキラを睨むヒカル。

「そうしなくてはならないから、そうしているんだ。つらかろうが…キミの為だ。」
「うぐぐ こんなんだったらサッサと飲んどくんだったよまったく…」
瞬きで目にたまった涙がポロリとこぼれる。ヒカルはぐいっと片手で涙を拭った。

「…あ…。」
もう一方の目に浮かんだ涙をアキラの指が拭い取った。

「ナニすんだよ」

「無理やり飲ませたりして…すまない 苦しかったろう。」

口移しなどという方法は元より思ってはいなかったものの、
ちょっとは惜しい事をしたかもしれない という気持ちがそんな行動に転化しているのではないだろうか 
…というのは本人にはわかっていない…かもしれない。


ヒカルは唇をとんがらせてアキラを睨む。

「あー、確かにな。…わかってんなら最初からそんな飲ませ方するなよ。…お陰でまあ、ちゃんと飲めたけど…。」

「気分はどうだ…?」
「ウン…えーと…。」
ヒカルは胸に手を当ててみた。

気分は悪くない。しかし、何か変化はあるのだろうか?

ヒカルは自分の体に耳をそばだてる気持ちで、少し首をかしげた。

 

「…ヒクッ。」

しゃっくりが出た。

 

固唾を呑んで見守っていたアキラたちは、そんなヒカルの姿にいささか緊張をそがれた。

「…ヒカル、しゃんとしろ。」

しかし。 
そのしゃっくり、一度、二度、どころではない。

どうしたんだろうと思う間にも、ヒカルの肩は幾度もホップしてそのたびにしゃっくりが次々と出てくる。

「ヒカル?!あらやだ、止まらないの?大丈夫?」

「どうした?喉に引っかかっているのか?」

ヒカルは即座に首を横に振った。

 

「けぽっ。」

そんな事はない、と言おうとしたが、しゃっくりで返事を返す始末。

 

『一体どーなってんだよ??!』口を押さえて困りはてた目でアキラを見上げるヒカル。

アキラも一体どうしていいかわからずにヒカルの背をさすってみた。

薬を飲んで、ヒカルの体に目に見える変化があるとしたら、今のところ、このしゃっくりだけである。

「アキ…ヒクッ…それより…ケプッ…アッチの…」

片手を口に当て、もう片方の手をようやっとの思いで上げて部屋の角を指差した。

「! この怪物…!」

ヒカルの思いがけない珍妙な薬物反応に気を取られてうっかりしている隙に、
一度は あわてて王妃のスリッパから逃げ出した虫たちが、御器曽の形に戻ろうと再び集まり始めていた。

 

無数の虫相手では、刀の一振りなど大した攻撃ではないだろう。次はどう対抗する、アキラは再びヒカルを背に、刀を構えなおした。

 

ヒカルの傍らでは、スリッパを構えなおす王妃が愚痴をこぼしていた。

「こんなにたくさんいるなんて、この城の衛生状態が疑われるじゃない、ああ恥ずかしいったら。」

「イエ、王妃殿、コレはあくまでも妖怪の類ですから。」

「そーだよ ケぷッ ウチは厨房にだって、ヒクッ、全然、ケポッ」

「キミはしゃべらなくていい…。」

 

黒い山に盛り上がった虫が人の形をとり始めた。

ヒカルが気絶しやしないかと、アキラは、かばうように前に立ちはだかる。


しかしヒカルはしゃっくりをナントカしようと精一杯で、恐怖におののく暇もない。

「グブ…おうか ん …!」

ついに再び直立する生き物のような姿をかたどった虫たち。
目の辺りにいる虫が長い触角を前面に突き出して、しきりに揺り動かしている。

さすがの母美津子も、その妖怪以外の何者でもない異常な姿に、ゾッと立ちすくんだ。
「いやああ…!」
思わずスリッパを取り落とし、よろめきながら王の横たわるベッドに縋り付く。

ガタンという衝撃で、ようやく再び目をあけた王。

「あ、あなた…!」

低くうなり、眉間にしわを寄せて実に恐ろしい表情で、王は体をムクリと起こした。

「………娘に………、」

「あなた!?」

 


「ウチの娘に何をしたんだ貴様ァ――――!」

 

ガバリと起き上がる父・正夫。
どうやら先ほどのヒカルの発言に、怒りの炎が爆発しているらしかった。

「わー!お父さ!ケポッ…ってなんでこんな時まで…ヒクッ」
「あなた!危ない!バケモノが襲ってくるのよ!」
母が必死で父の体をかばう。

「貴様かー!娘を傷物にしたのはー!」

王が睨む先にあるのは
アキラではなく、怪物と化した虫の塊だった。
王様、怒りのために若干錯誤している模様。

王の見た事もない剣幕に、虫の塊は怯んだ様な動きを見せ、
一瞬、

してないしてない、というリアクションをとったように見えた。

 

「我が子を、我が王家をよくも愚弄してくれたな!我が命にかえても成敗してくれる!」

 

「ヒクッ!?(おとーさん?! い、いつものおとーさんじゃない?!)」 

「あなたっ!?」


一瞬怯んで見えた黒い怪物だが、正夫の頭上にある王冠に気付き、様子を一変させた。

 

「お う か ん!!!」

 

途端に口元がガアッと裂け、恐ろしい笑い声が響く。

甲高くきしむ音が重なり合って生まれたような声は、王冠に狂喜しているに違いなかった。

 

その王冠は、普段国王が身につけているもので、王位を示す本物の王冠ではない。
本物の王冠は先ほどヒカルが言ったように、すでに城の外にある。
しかし、この虫どもにはそんな判断はすでに付いてはいなかった。

「けぷ、いけない!」

ヒカルは相変わらず幾度も幾度もしゃっくりで体を跳ねさせながら、
大慌てで父の傍に転がり寄ってやっとの事で王冠をひったくった。

 

「うわ、ヒ、ヒカル!?」

「ヒカル!どうしたのっ?!」

 

「どうする気だ!ヒカル!」

 

 

驚きの声を無視して、ヒカルは王冠を掴んだ手を高く掲げたまま、(もう片方の手は相変わらず喉元を離れられないが。)怪物に体を向けた。

 

「王冠ッ ヒク、は ここだ! ヒック、欲しけりゃ追って、ヒキッ …来い!」

 

逆上した怪物はその姿をぐしゃぐしゃと波打たせ、標的を正夫から再びヒカルに移して追いかけた。

 

「おかーさん!おとーさん!ここから逃げて!お堀に舟があるから!はやく!」

「ヒカル、バカな真似はやめなさい!」

「オレはいいから!他のみんなにも逃げるように言って!」

「ダメよヒカル!あなたこそ逃げて!」

 

制止する両親を置いて、ヒカルは王冠を怪物に見せびらかすように振り回しながら、砕

けた扉を抜けて飛び出していった。

 

「ヒカル!」

 

すかさずアキラが刀を横一文字に振り、黒い塊を斬る。

勢いをつけて今まさにヒカルの背後に襲い掛かろうとしていた虫たちは、形を乱して雪崩れ落ちた。

 

一瞬散らばる虫たちを背後で叩き潰そうとする音がする。

 

アキラは肩越しに、王妃が応戦してくれているのを見た。

「後を追います!ヒカル王女は ボクが守ります、なんとしても!」

急いでそう告げると虫が再び集結するより早く、後を追って扉を飛び出した。

 

王妃は お願い、とアキラの背中に声をかけ、自らはスリッパを休まず振り下ろす。

「…お父さんもお願いします! 少しは手伝って!」

王妃は王にスリッパを片方押し付けた。

「…おまえには、かなわないなあ…!」

 

 

城の廊下を走るヒカル。その背に追いすがり、高く掲げた手にある王冠を奪おうとする虫の津波

幾度もその手に敵の姿が黒く伸びて、王冠を奪おうとするのだが、あわやという所でヒカルのしゃっくりが手を跳ね上げて窮地を脱する。

「うまいぞ、ヒカル!」

「ヒック、バカわざとやってんじゃねーんだってば、ヒク、」

アキラがすぐ後ろに追いつき、虫の塊に一撃を加える。

刃に背中を撫で斬られそうになり、ヒカルは背筋を凍らせた。

「ひいいい!こんな傍でそんな刀振り回すな!…ヒクッ」
「心配するな、キミには当てない!」

そう言い返しながら、アキラは心の片隅で、

  …驚いてもしゃっくりは止まらないらしい。

と 少し がっかりしていた。

「それで、薬は効いているのか?」

「ヒック、そんなの わかんねーよ・ヒク、こ、こんな状態で ヒック、それどころじゃねーもん!それよっか・ヒク、い、息、息続かなくって・キュクッ 」

「じゃあ、どうするんだ!」

「逃げるッ!」
「それだけか!」

「それだけ!ヒック、スキを作って 城に残ったみんなを逃がすんだ!」
「逃げるってどこへ!」

「どこって…」

「考えていなかったな、さては!」
「わー!ヒック、かんがえてるかんがえてる!」

「本当か?」
「ホントホント!」

「では何処へ行く気だ」
「えーと」

「考えているのは今じゃあないのか!」
「ちがうって、ヒック!」
「こんな時に ふざけると承知しないぞ!」 

 

その時ヒカルは窓に横切る城の一部を視界に横切らせて、
あっ と声をあげた。

「なんだいまの 「あ」は!?」

「行くぞ!」

ヒカルは目標を得て、スピードを上げた

 

「お城の ヒック、はずれまで・キウッ おびき寄せれば、コイツらを皆から遠ざけられるだろ!」

「ヒカル!?」

「お城の中でも、城の連中から遠く離れたところ!ケポ、誰もいないところなら…!」

 

城の一番はずれの しかも、家来達は決して行かない場所。

 

「それはどこだ!?」
廊下の終わりまで駆けついて、ヒカルが手をかけた扉、

 

それは 「継承者の間」へと続く扉だった。