2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧
<オマケ>
階下に降りてみると、城にはすっかり明るさが戻っていた。 あちこちひどく壊れたところや、 …なにやら燻蒸した様な痕跡はあるが 朝早くから大勢が復旧に当たっていた。 「ヒカル様が生きておられたぞ!」
暗い部屋の中にはアキラただ一人。 アキラの足元には、ヒカルの投げつけた王冠が転がっている。 だが アキラの目はもう なにも映していない。
その場所から程近くにある、継承者の間。秘密の部屋の、あの碁盤が、ふわりと光を帯びた。
「あなた、ヒカルの言うとおり、ここから出ましょう。せっかく生き返ったのにここにいちゃ危険よ。」 王妃は、あらかた虫を退治し終えて、スリッパを振るう手を緩めながら、王に振り返った。 「う、うむ、城に残った者たちも心配だ。ヒカルが心配だが、塔矢…
四人のいる部屋の扉を蹴破って乱入してきたのは、 御器曽卿であった。 しかし、その風貌は既に正気の人間のものではなく、 反射的に行動する下等な獣のような異様さが漂う。扉の砕けた木片を顔にも体にも浴びていながら、払おうともしないで部屋の中をぎょろ…
「ど、どしたのおとうさん?」 「…どうしたのじゃない!誤解されるような事を言ったからだろう!」 「誤解って?」 それを言わせるのか!
「お待ちください!橋は落ちております!」 「そこを飛び越えようなどと無茶はおやめくだされ!」 「ヒカル様っ!」 「若!」
丘の上でアキラとヒカルは合点のいかない顔を見合わせていた。 「一体どうしてボクたちは日向に?…佐為殿は…?」
ちょうど永夏が投了したと同じ刻、ここは再びヒカルの国。城の片隅にある 暗い部屋の中、 引きずられて放り出された格好のまま、床に仰臥していた男の姿があった。 ヒカル王子が正真正銘の男だという、立派すぎる証拠を目の当たりにして、すっかり放心状態に…
「最後の最後でとんでもない事言い出しやがって、ああっホントだこの岩山、割れてッてるよ!」 「ヒカルッ逃げましょう!」 「逃げるったってどうやって!?」 「もと来た入り口は!?」
地下の洞窟の中は、しん と静まり返っている。 唖然 呆然 天然 と表情はそれぞれ違っていたが 倉田とヒカル以外は共通して、あまりの驚きに眼がマックスレベルに見開かれていた。
王城の地下に広がる空間。 地底の玉座にも見える岩の上では、今はヒカルに代わって佐為が永夏の対面に座し、緊迫する対局が続いている。 その側でヒカルとアキラは、対局する両者の痛烈な打ち込みに目を瞠り、予想だにせぬ意外な一手に目を丸くし、極限まで…
洞窟の中に高く聳える岩に刻まれた螺旋の石段を、目指す頂を見上げながら ヒカルはおもむろに昇っていった。 「行ってはダメだ!」「…ヒカル…!」 アキラや佐為には、いけにえが自ら捧げられに行くようにしか見えない。 ヒカルは恐れに震えながら、それでも…
再び東の国。 ナチグロ扮するヒカル王子はアキラの愛馬、日向を駆って戦いを続けていた。
西の国。 王城の とある場所。 暗く窓の無い広い空間の、その奥。宙に浮かぶ松明は、蒼醒めた色の炎を揺るがせて永夏の姿を浮かび上がらせていた。 その長身の若い男は、黒く長い衣をまとい、暗い部屋の真中に唯一照らし出されている碁盤を置かれたテーブル…
西の国の平原を マントを翻して駆けて行くのは、ヒカルと社の二騎。 その後をアキラが佐為と倉田を乗せた馬車を御して追う。 計5人のパーティーとなったヒカル一行。
河を渡りきり、対岸に辿り着いた二頭の馬は、荒い鼻息をつきながら、秋の草が茂る土手を踏みしめて陸に上った。 岸の周りの気配を注意深くうかがっていたが、何も怪しい様子は感じられない事に社もヒカルもホッと肩を落として、手綱を緩めた。
細い首に、やわらかな頬の感触、たしかにリボンの棋士だと思ったのもつかの間、 ぱさり、と、肩に落ちたフードから現れたのは、黒い仮面をつけたヒヨコ頭。 びっくりして社は手を離す。 「…エ???お、おい、オマエは…。」
アキラに支えられて何とか立ち上がったヒカルだが、 “前”を直しながら「くそォ!あのヤロー!」と悪態をつく“ヒカル”が現れ、再びぐらついた。 「こんなところで気絶なんかしてもらっては困る。」 肩を支えるアキラの台詞にカチンときたヒカルは 「(だっ、…
飛びこんできたもう一人のヒカルは、ヒカルに、うれしそうに飛びついてきた。 「わあっ?!」 「ヒカルがもう一人ですとー?」 「同じ顔だあ。双子?」 「ヒカル様が…二人???」 目の前の二人のヒカルを見て、あかりは気絶してしまった。 「あかりっ!」
さて、時は4日前の夜に遡る。 森を抜け、西に向かってひたすら馬を飛ばす、おっさん二人。
時間は少しだけさかのぼる。 桑原のいる塔の、すぐ近く。あかりは、ここまでアキラを導いた後、塔を不安げに見上げていた。
「フン、まあ、墜ちたと言うても、ワシの知っとるうちではカワイイもんじゃ。 確信犯ではないしのう。 自ら望んで天に背く者ならば、闇の力を手に入れるじゃろうが、人間同然にまるっきり力を失うとは…、 堕天使と言うよりは、駄天使、と言ったほうが合うと…
ガタッ! 思わず立ちあがったのは、 …リボンの棋士だった。
明け方近く。 ヒカルは眼を覚ます。 自分の部屋のベッドに身を沈め、ふかふかの布団に包まっていた。 いつもならまだ秘密の部屋にいて、碁の特訓でもやっている筈の時間なのだが。 「いつの間に戻ってきたんだろ…?」